企業側の労働問題

労働問題と企業経営は表裏一体の関係にあるといっても過言ではありません。

サービス残業の問題、就業規則の不備、従業員とのちょっとしたトラブルなど、一見些細に思われた問題への対処を見誤ると、経営の根幹を揺るがすことにもなりかねないからです。

企業は企業として生き残るために、法律を駆使しなければならない時代になったのです。

労働問題の拠りどころである労働諸法は、労働者保護の観点を重視しています。したがって、問題が顕在化して紛争に発展してしまった場合には、はじめから企業側が厳しい立場に立たされていると思ってよいでしょう。

不要な労働トラブルを防ぐには、普段から問題意識を持って職場環境を観察するとともに、内部ルールを整備して足下をすくわれないようにしておくことが重要です。

内部ルールが未整備の場合には、早急に専門家に相談することをおすすめいたします。

また、もし問題が顕在化してしまった場合には、問題の所在を的確に見極め、然るべき処置をとる必要があります。労働問題においては、解決に至るまでの手続きが適正に行われているかどうかも争点となります。

したがって、労働諸法に精通した専門家に相談することが賢明でしょう。

本サイトでは、企業が直面しやすい労働問題に関して、以下に詳しく記載しております。ご参照ください。
また、本サイトで取り上げ切れなかったテーマ、個別の案件については、弁護士にご相談ください。

 

 

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◆団体交渉をされた時の対応   ◆団体交渉をされないために            ◆残業代を抑える方法 

◆残業代を請求されたら     ◆解雇するために必要な条件            ◆解雇する場合の注意点


残業代を請求されたら

「退職した従業員から残業代を請求されました。どのような対応をとるべきでしょうか?」

昨今、このような相談は非常に多くなっております。
まず、大切なことは、このような従業員の請求を無視してはならないということです。

残業代請求事例は、退職した従業員からのケースが多く、事前に労働基準監督署や弁護士等に相談をして、アドバイスを受けている場合がほとんどです。

相手の要求を無視すると、労働基準監督署からの出頭要求書が会社に届くか、または、立ち入り調査によって、全従業員について「残業代の未払い」を命じられる可能性もあります。また、相手の弁護士から労働審判を申し立てられ、会社が大きなダメージを受けることがあります。

かといって、相手の要求を全面的に認めて、応じる必要はまったくありません。

相手の残業代請求は、不必要な時間外労働が含まれている、残業代の計算を適切に行っていない、等の不当な残業代請求であることが多いからです。

そこで、会社としては、相手の勤務実態を調査し、相手が主張する労働時間に間違いがないか確認してください。その上で、その資料をもって、弁護士に相談されることをお勧めします。

労働諸法に精通した弁護士であれば、適切な残業代を算出した上で、不当な要求をする相手に対して十分な反論をいたします。また、労働基準監督署に対しても、弁護士に依頼していると伝えることで、行政処分等を回避することも期待できます。

当事務所は当該事案を処理するだけでなく、今後、残業問題の発生を未然に防止するためのアドバイスもさせていただきます。

 

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残業代を抑える方法

残業代そのものを直接抑制する方法としては、以下のようなものが考えられます。

 

① 変形労働時間制の導入

労働時間は1日8時間、週40時間以下と決められていて、これを超える時間を労働させる場合は、
時間外労働となるのが原則です。時間外労働になれば当然時間外手当の問題が生じてきます。

しかし、業態によっては上記法定労働時間が業務にそぐわない場合があります。

例えば、1ヶ月のうち、後半は忙しいが前半はほとんど仕事がないくらい暇だとか、あるいは1年のうち
夏は忙しいけど冬は暇だとかいう業種です。また、24時間をカバーする交替勤務制のところは、
1日の勤務時間が8時間を超えることが必要不可欠な場合もあります。

このような場合、変形労働時間制を採用することで、法定労働時間を超えて
就業させることができます。これは使用者にとって有利な制度ということができます。
この変形労働時間制には、1か月単位、1年単位、1週間単位のものがあります。
 

② 残業代を月額賃金の中に含ませる(定額残業制)

多くの残業時間が発生しているが、毎月の残業代計算が煩雑であるので残業代を定額としたい場合、法所定の割増賃金に代えて一定額の手当を支払う制度です。

この定額残業制については、裁判例上、次の要件を満たす必要があると考えられます。
 
①通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区別できること
②込みとなる時間を超えるときは、不足分を支払う合意がなされていること

(最判平6.6.13高知県観光事件、東京地62.1.30小里機材事件、最判昭63.7.14他)

ワンポイント

この制度を実際に導入する場合は、給与の中に残業を何時間分含めているか、そして、含められている残業時間を超えて働いたときは、残業代を別途支払う旨就業規則・雇入通知書に記載しておくべきです。
この点を押さえていないと、後々残業代を請求された場合、大変な事態となります。
 

③ 事業場外のみなし労働時間制の導入

これは、従業員が事業場外で業務に従事している場合で、労働時間を算定しにくいときに
所定労働時間だけ労働したものとみなす制度です(労基法38条の2)。

このみなし制は、取材記者や外勤営業職員などの常態的な事業場外労働だけでなく、出張等の臨時的な事業場外労働も対象となります。
また、労働時間の全部を事業場外で労働する場合だけでなく、その一部を事業場外で労働する場合も含みます。
 

④ 在宅勤務によるみなし労働時間制の導入

近年、インターネットや情報処理を中心とした技術革新により、IT(高度通信情報ネットワーク)化が急速に進んでおり、パソコンや端末等のVDT(Visual Display Terminal)が家庭や職場を問わず広く社会に導入され、職場環境や就業形態等についても大きく変化している状況にあります。

このような中で、情報通信機器を活用して、労働者が時間と場所を自由に選択して
働くことができる働き方であるテレワークという新たな就労形態が可能となりました。

厚生労働者は、「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を定め、
その後改訂し、在宅勤務等の適切な導入と労務管理のあり方を示しています。
 

⑤ 裁量労働制(専門業務型・企画業務型)の導入

これは、一定の専門的・裁量的業務に従事する労働者について、遂行の手段・時間配分の決定等を
労働者の裁量に委ね、労働時間については「みなし労働時間」を定めて労働時間を算定する制度です。

この裁量労働制には、
①専門業務型裁量労働制
②企画業務型裁量労働制

の2種類があります(労基法38条の3,38条の4)。
 

⑥ 振替休日の利用

これは、どうしても従業員に休日に働いてもらう必要が出てきた場合に有効です。

本来、休日出勤の場合、休日割増手当(法定休日の場合3割5分増し)を払わなければなりませんが、
休日の振替措置(振替休日)を行うことで、この割増賃金を支払う必要はなくなります。

ただし、以下の要件をみたす必要があります。
① 就業規則等で休日の振替措置をとる旨を定める
② 休日を振り替える前に、あらかじめ振替日を決めておく
③ 法定休日(毎週1回以上)が確保されるように振り替える


この要件のどれかが欠ければ、それは振替休日ではなく、「代休」になってしまいますので、ご注意ください(「休日労働」の割増賃金35%を支払う必要があります)。

週休1日制の場合、休日を別の週に振替えると法定休日が確保できないため、「休日労働」になってしまいます。
週休2日制の場合は、出勤日と同じ週に振替休日を取れずとも1日の法定休日が確保されていれば「休日労働」は発生しません。

 

 

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賃金交渉

会社を存続させるために悩みぬいた末の苦渋の決断であり、大変心苦しことと存じます。

しかし、会社が勝手に従業員の基本給や諸手当の額を減らすことは基本的に許されません。
賃金は労働契約における重要な労働条件です。

会社が勝手に従業員の基本給や諸手当の額を減らすことは原則として許されませんのでご注意下さい。

 

賃金カットの対応方法

①個々の労働者との合意
②人事考課に基づく減額査定、降格
③人事権に基づく配置転換に伴う減給
④就業規則による賃金制度の変更や変更解約告知
⑤懲戒処分としての減給、降格

合意的な理由で賃金値下げを実施することがポイント

従業員が合意さえしていれば、賃下げはできると考えられている経営者の方は多いと思われます。
しかし、賃金の減額という不利益を、従業員が自ら甘受するのは、特別な事情がある場合です。

そのため、既発生の賃金の放棄についてはもちろんのこと、将来の賃金の減額に関する
同意についても、それが従業員の自由な意思に基づいてされたものであると
認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要です。

合理的な理由とは、以下のような点を踏まえる必要があります。

●労働者の受ける不利益の程度
●賃下げを変更する必要性
●労働者との話し合い・交渉の経緯、状況
●賃下げを避けるためにした実施した行為


弁護士が介入すると、経営者に代わって合意的な理由や従業員への合意をとる手段を代わって実施することが出来ます。
 
是非当事務所へお問合せ下さい。

 

 

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パワハラ、セクハラ

現代社会で問題になっている、パワハラ・セクハラに関するトラブル。
あなたの会社でもこのような問題が発生しないとはいえません。
当事務所でも、近頃パワハラ・セクハラに関するご相談を数多く受けております。

 

相手が不快と感じればセクハラとなる

セクハラとは、身体に触れたり、性的関係を強要したりすることはもちろんのこと、性的な発言をする、人前で性的な記事の出ている新聞を広げるなど、相手が不快と感じればセクハラとなりえます。

個人が損害賠償を求められるだけではなく、見て見ぬふりをしたり、被害者から相談を受けたにもかかわらず何の対策も取らなかった場合には、会社側も管理責任を追及され、慰謝料の支払を命じられ可能性があります。

男女雇用機会均等法でも「職場におけるセクハラ防止のため、雇用管理上必要な配慮をとらなければならない」と定めています。

相手を思っての叱責が暴力になる

パワハラとは、地位や権力を持つ相手により行われる理不尽な命令や言葉の暴力のことをいいます。
絶対に達成不可能なノルマを課すことや、逆に全く仕事を与えないということもパワハラとなります。

セクハラとは異なり、パワハラに関する法令はありませんが、損害賠償を命じられるケースもありますので、実態を把握したら迅速な措置をとる必要があります。

セクハラもパワハラも、いずれもどこからがハラスメントであるのかという線引きが明確ではないため、注意が必要です。個人(従業員)から相談を受けた場合には、見てみぬふりをせず、適切に対処をするべきです。対応がおろそかになり、従業員が自ら行動を起こした場合、企業の信用度が社会的にも著しく低下してしまいます。

パワハラ・セクハラに関するトラブルにおける弁護士の役割は、
未然に防ぐためのご提案をすることは勿論、万が一発生した場合でも、被害者側と企業側の損失が大きくなる前に対処できるという点です。是非ご相談下さい。

 

 

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パワハラ、セクハラで訴えられたら

セクハラへの対応

セクハラ問題に対しては、次の3つの局面が考えられます。

 

(1)法的助言

詳しい事情を伺った上で、
①まず、当該行為がセクハラ行為にあたるか
②次に、セクハラ行為があったとすればどのような処分が適切か
③セクハラ行為でなかったとすれば、その後従業員にはどのように対応すべきか
等を専門的観点より適確にアドバイスします。

(2)示談交渉

セクハラ行為を受けたと申告してきた社員、またはセクハラ行為を行ったとして懲戒処分等を受けた社員が、
会社の対応に不満を持ち、不適切だったとして争ってきた場合には、弁護士が御社に代わって交渉にあたります。


(3)訴訟

上記のアドバイスに従って対応したにもかかわらず、訴訟を提起されてしまった場合には、
事実関係をよく把握している弁護士が御社の対応が適切であったことを代弁して戦います

また、上記のアドバイスを受けずに訴訟を提起されてしまった場合でも、
弁護士が出来る限り御社の対応の正当性を主張し、ダメージが最も少なくなるように最大限努力します。

 

パワハラへの対応

パワハラが発覚した場合の会社の対応

(1)実態調査
パワハラと言っても、その境界線を明確に定められるわけではありません。
上司、部下双方に認識のずれや見解の違いがある可能性があります。

パワハラの相談や申告があれば、まず実態調査を行い事実関係の把握に努める必要があります。

該当する上司や部下へのヒアリングの他に、現場を目撃した従業員へのヒアリング、
上司と部下のメールのやりとり等についてチェックを行うべきです。

ヒアリングや調査を実施する場合は、「いつ」「だれが」「どこで」「何をしたのか」について記録するようにしましょう。
また、上司と部下との言い分が食違っている場合、メール等の客観的な資料の存在がとても重要となってきます。

(2)懲戒処分の検討
パワハラが認められた場合には、パワハラを行った従業員に対しては懲戒処分を検討すべきです。ただ、注意しなければならないのは、直ちに懲戒解雇を行うということはできないということです。

なぜなら、後に、懲戒解雇された従業員から「解雇権の濫用」等を理由に不当解雇だとして、
訴訟等を提起された場合、裁判所からはパワハラを防ぐ措置を怠っていたと判断され、
懲戒解雇が無効とされる可能性が高いためです。

パワハラの内容にもよりますが、まずは、譴責、出勤停止等の軽い処分等を
過去の処分事例を考慮しつつ、就業規則に基づいて行うべきです。

(3)人事異動

パワハラを行った従業員を別の部署に異動することも一つの手段です。

また、その従業員が管理職であれば、マネジメントの役割を果たしていないという理由で
降格することを検討してもいいでしょう。

事前に定められている就業規則にもよりますが、これらの処分は懲戒処分に該当しないため、
懲戒処分と同時並行で行うことも可能です。

 

パワハラ問題への弁護士の対応

パワハラについても、セクハラと同様に次の3つの局面が考えられます。

(1)法的助言

詳しい事情を伺った上で、
①まず、当該行為がパワハラ行為にあたるか
②次に、パワハラ行為があったとすればどのような処分が適切か
③パワハラ行為でなかったとすれば、その後従業員にはどのように対応すべきか
等を専門的観点より適確にアドバイスします。

(2)示談交渉

パワハラ行為を受けたと申告してきた社員、またはパワハラ行為を行ったとして懲戒処分等を受けた社員が、会社の対応に不満を持ち、不適切だったとして争ってきた場合には、弁護士が御社に代わって交渉にあたります。

(3)訴訟

上記のアドバイスに従って対応したにもかかわらず、訴訟を提起されてしまった場合には、

事実関係をよく把握している弁護士が御社の対応が適切であったことを代弁して戦います。

また、上記のアドバイスを受けずに訴訟を提起されてしまった場合でも、
弁護士が出来る限り御社の対応の正当性を主張し、ダメージが最も少なくなるように最大限努力します。

 

 

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解雇問題

解雇は会社の自由な権利ではありません

解雇とは、使用者からの一方的な労働契約の解約のことをいいます。
したがって、労働者の承諾は不要です。

経営者としては、生産性を妨げる従業員は解雇して当然だと考えがちですが、日本の労働法制下では、従業員を簡単に解雇することはできません。
労働契約法第16条には、客観的・合理的な解雇事由があり、社会通念上相当と認められないかぎりは、解雇したとしても無効になると明示されています。

このことを知らずに安易に解雇の手続きを進めてしまった場合、従業員との間で紛争を招き、多大な労力を強いられることにもなりかねません。

したがって、解雇したい従業員がいる場合は、その解雇事由を慎重に検討するとともに、慎重かつ適切な手続きを行わなければなりません。
円満解雇に向けて具体的には、下記のような方法を用いて合意退職(任意退職)に持ち込むことが妥当な方法と言えます。

 

(1)指導・教育の実施

たとえ従業員の能力が著しく不足している場合であっても、それだけを理由に解雇するのは困難でしょう。
もし訴訟に発展した場合、裁判所は会社に対して、当該従業員の業務遂行能力が欠如していることを示す証拠を提出するように求めます。

ただし、能力の有無は、雇用主や上司の主観的な評価を含む場合が多く、客観的に能力の欠如を立証することは非常に難しいものです。
つまり、訴訟に持ち込まれた時点で、会社の勝ち目はほとんどありません。

以上のことから、会社と従業員が退職に合意した上で手続きを進める「合意退職」が、事後のトラブルを回避する解雇の方法として有効であると考えられます。

合意退職に持ち込むには、まず会社が当該従業員に対して指導・教育を行う必要があります。
その際、「指導・教育の具体的内容」、および、「指導・教育を実施したことで当該従業員の就労態度や業務能力がどのように変化したのか」について記録を残してください。

裁判所は、会社が当該従業員の退職を回避する努力を採ったのかを重視しますので、退職に至るプロセスを全て証拠として残すことが重要になってきます。

(2)配転の実施・退職勧奨の実施

然るべき指導・教育を施したにも関わらず、当該従業員の就労態度や業務能力に変化が見られない場合は、配転(部署異動)の実施を検討しましょう。

それでも変化がない場合には、退職勧奨を行ったうえで、降格・降給を実施すべきです。
なお、退職勧奨は必ず2名以上の面接形式で行い、後々「退職を強いられた」と言われないように配慮する必要があります。

この時点で従業員が退職勧奨に応じる場合は、家族構成等に応じて退職金額を加算することも検討すべきでしょう。
最終的に従業員が退職勧奨に合意した場合は、合意書を作成してください。

合意書の文言に不備があった場合、トラブルが再燃する可能性もありますので、合意書の作成に際しては専門家に相談することをおすすめします。

不当解雇の効果

裁判によって解雇が無効とされた場合、解雇されなければ得られたであろう賃金の支払いや、被解雇者の職場復帰を会社が命じられることがあります。
もしも職場復帰した被解雇者が、会社に一方的に不当解雇されたなどと声高に主張した場合、他の従業員が会社に対する不信感や嫌悪感を抱くようになることは必至です。
よって、従業員を解雇する場合は、極めて慎重な判断と対応が必要です。
労働訴訟に発展してしまうと、膨大な労力とコストを費やすことになりかねません。

トラブルを避けるためには、まずは弁護士に相談しましょう。

 

 

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解雇するために必要な条件

解雇には正当な理由が必要です

以下では、どのような場合に解雇する正当な理由があるとされるのか、具体的にご説明します。

解雇権濫用の禁止

解雇は使用者の判断だけで成立するものではありません。解雇が有効とされるためには、解雇権を濫用したと判断されないような理由が必要です。もし、解雇が客観的・合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、解雇権を濫用したものと判断され、解雇が無効となります(労働基準法第18条2項)。

すなわち、従業員を解雇する場合には、その従業員が解雇されるに足る客観的・合理的理由があると認められるかどうかを十分に調査する必要があります。

解雇するために必要な理由とは

従業員を解雇する場合には、解雇するに足る客観的・合理的理由が必要です。客観的・合理的な解雇事由としては、以下のようなものが考えられます。

①社員の入院

多くの企業では、労働者の死傷病による欠勤が一定期間以上にわたる場合を休職とし、休職期間満了時点でも復職が困難な場合、解雇あるいは休職期間の満了をもって退職と扱う旨の就業規則を定めています。つまり、数週間の入院で病気が治療可能な場合には解雇は原則認められず、職場復帰時期が予測できない程の長期間を要するような場合には、労務提供が不能であるとして解雇しうると考えられます。このような就業規則に該当するか否かという形で、解雇(退職)の有効性が争われる場合が多いようです。なお、病気の社員を解雇する際には、業務上負傷または疾病にかかり、療養のため休業する期間、および、その後30日間は解雇できないものとされています(労働基準法第19条1項)。

②勤務態度や勤務状況の不良

ただ勤務態度や勤務状況が悪いだけでは解雇は認められず、解雇がやむを得ないと考えられる客観的・合理的な理由と、社会通念上相当と認められる事が必要です(労働契約法16条)。具体的には、以下のような観点から解雇の有効性が判断されます。
●勤怠不良等の回数・程度・期間・やむを得ない理由の有無
●職務に及ぼした影響
●使用者からの注意・指導と当該従業員の改善の見込み
●当該従業員の過去の非行歴や勤務成績
●過去の先例の有無


③労働能力の欠如

基本的には、雇用関係を維持することができない重大な能力不足でなければ、解雇することは難しいでしょう。ただし、当該社員が一定の労働能力を有していると想定して採用したものの、実際には労働能力が著しく欠如していたような場合には、その程度によって解雇しうると考えられます。労働能力の欠如を理由として解雇するためには、直ちに解雇するのではなく、当該社員に対して不十分な点を説明し、労働能力を向上させるための援助をすることが先です。その上で、なお是正されない場合に解雇を行うという配慮が必要であると考えられます。これを怠った場合、解雇権の濫用として責任を問われかねませんので、注意が必要です。

④経歴詐称

重大な経歴詐称があった場合には解雇しうると考えられますが、全ての場合に解雇できるわけではありません。具体的には、その経歴詐称行為が重大な信義則違反に該当するかどうかを以下のような観点から総合的に判断し、信義則違反にあたると判断された場合には、解雇が許されるものと考えられます。
●就業規則に経歴詐称を解雇事由とする旨の有無
●経歴を詐称した態様
●意識的に詐称されたものであるか
●詐称された経歴の重要性の程度
●詐称部分と企業・詐称者が従事している業務内容との関連性
●使用者の提示していた求人条件に触れるものであるか
●使用者が労働契約締結前に真実の経歴を知っていれば採用していなかったと考えられるか

⑤既婚社員による社内交際

私生活上の行為を理由として解雇しようとしても、実際には認められない場合が多いようです。ただし、こうした行為が原因で、会社の業務や信用に著しい影響を及ぼした場合には、解雇が認められることもあります。

解雇までの手続きも慎重に

解雇事由が正当なものだったとしても、解雇に至るまでの方法が慎重さを欠いている場合には、解雇権の濫用と判断されることもありますので注意が必要です。解雇権の濫用と判断されないためには、解雇される者の選定が合理的であるかどうか(被解雇者選定の合理性)のほかに、解雇を回避するための努力が尽くしたがどうか(解雇回避努力)、事前に説明・協力義務を尽くしたかどうか(解雇手続の妥当性)が争点になってきます。

つまり、できるだけ解雇以外の方法によって解決しようとしたという経緯が必要になります。例えば、無断欠勤の多い社員を解雇したい場合には、最初から懲戒解雇を行うのではなく、まずは戒告・訓戒などの解雇以外の懲戒処分、それでも改まらない場合には諭旨解雇を試みる必要があります。それも困難な場合に、最終手段として懲戒解雇を考えるというステップが重要です。

解雇のご相談は弁護士へ

解雇するに足る正当な理由があるか否かについては、具体的な事情によって結論が異なります。事実関係をきちんと調査せずに不当解雇を行った場合、後ほど会社の損害賠償責任が問われる可能性がありますので、安易な解雇判断は禁物です。

解雇する時点では、被解雇者が何の文句も言わず穏便に解雇できた場合でも、その後、解雇の無効を訴えて争ってくる可能性も十分に考えられます。したがって、解雇できるかどうかが不安なとき、あるいは、解雇する上での手続きが不安なときは、弁護士に事実関係を詳しく説明して判断を仰ぐのが賢明でしょう。

 

 

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解雇する場合の注意点

解雇事由の証明

従業員を解雇する場合は、被解雇者が不当に解雇されたと主張して訴訟に発展する可能性も視野に入れておく必要があります。したがって、解雇する際には、その客観的・合理的な理由が存在したことを証明できるものを残しておくべきです。このような点に留意せずに解雇すると、後々正当な解雇であったことが証明されず、解雇が認められなく可能性がありますので、注意が必要です。

 

トラブルを避けるための任意退職

正当な解雇事由があったとしても、当該社員がその解雇事由の事実自体を争ったり、事実自体は認めても解雇の不当性を主張して紛争に発展したりした場合、会社はその紛争解決に時間と労力を費やさなければならなりません。このような事態を避けるためにも、まずは任意退職を実現する努力を行ってください。
 
そのためには、解雇の理由を記載した「解雇理由書」を作成して本人に呈示し、十分に話し合いを行う機会を設けることが重要です。本人が納得して任意に退職することに合意した場合は、必ず退職届を提出してもらうようにしてください。
 

解雇もやむを得ないときは・・・

(1)証拠を残す

どれだけ説得しても当該社員が任意退職しようとしない場合は、解雇もやむを得ません。こうした場合には、まず、被解雇者が解雇の不当性を争ってきた場合に解雇事由の客観性・合理性を主張できるように、十分な証拠を残しておく必要があります。もし、解雇が正当であることを明確に主張できない場合には、解雇権の濫用と判断され、解雇が無効とされてしまうおそれもあります。したがって、解雇事由を何らかの形で客観的証拠として残しておくことが重要です。

(2)どのような証拠を残すのか

解雇事由を何らかのデータとして示すことが可能であれば、客観的な資料として残しておくのが良いでしょう。証拠になりうるものとしては、勤務成績や欠勤日数などが考えられます。
 
被解雇者が起こした問題ある行動を注意する場合は、書面にしておくのがよいでしょう。記載内容としては、最初は単に問題行動の改善を促すような文面で構いません。2回目以降注意をする際には、今後改善されない場合には相応の処分を加えることを示唆する文面を加えるとよいでしょう。解雇の可能性があることを示唆したにも関わらず、本人の態度に何ら改善が見られなかったことは、解雇の正当性を判断する上で重要な証拠になります。
 
また、一度の問題行動を理由として解雇したのではなく、何度も注意を行うなどして解雇以外の解決方法を最大限模索したということが証明できれば、解雇が妥当なものであると判断される一材料として会社に有利に働きます。なお、被解雇者が解雇自由となった自らの行動を認めている場合に覚書を作成しておけば、後々紛争に発展した場合の証拠とすることが可能です。
 

解雇手続

解雇トラブルを防ぐには、適正な解雇手続きを踏むことも重要です。解雇する場合は、被解雇者に対して解雇する旨を通知する必要があります。解雇予告は、少なくとも30日前に行わなければなりません(労働基準法第21条1項)。30日前までに解雇予告をしなかった場合は、30日以上の平均賃金を支払うか、予告してから30日が経過するまで解雇は成立しません。これは懲戒解雇の場合も同様です。
 
解雇予告の方法は、法律上は文書でも口頭でも構わないとされていますが、通知の有無や紛争に発展した場合を考慮し、文書での通知が望ましいでしょう。また、被解雇者が確かに解雇予告を受け取ったことを証明するために、内容証明郵便を利用しましょう。
 

解雇無効を主張されたら

一度は解雇したものの、時間が経過してから被解雇者が解雇の無効を主張してくる可能性も十分に考えられます。この場合、まずは解雇無効を主張する理由を確かめることが重要です。解雇自由に納得がいかないのか、解雇手続の不備を問題としているのか、あるいは、どのような事実を主張しているのかによって、会社が取るべき対処方法も変わります。したがって、解雇無効を主張されたら、まずは主張理由を明示するように求める書面を被解雇者に送りましょう。これに対する被解雇者の反応を見ることで、解雇無効の主張が単なる言いがかり的なものなのかを判断することができます。
 
被解雇者の主張がはっきりしたら、弁護士に事情を説明しその後の対応を相談しましょう。そのまま放置してしまうと、解雇無効の訴えが提訴されるおそれもあります。また、不誠実な対応をした場合、そのような対応に対する慰謝料をも請求されるおそれもあります。したがって、迅速かつ適切に行動することが重要です。

 

 

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◆団体交渉をされた時の対応   ◆団体交渉をされないために            ◆残業代を抑える方法 

◆残業代を請求されたら     ◆解雇するために必要な条件            ◆解雇する場合の注意点


労基署対応

労働基準監督署(労基署)の抜き打ち調査で未払い残業代が発覚したために是正勧告書を渡されたが、どのように対応したらいいのかわからずに困っているという方は少なくないのではないでしょうか。

労働基準監督署は、厚生労働省の各都道府県労働局の管内に設置されている出先機関で、労働基準局の指揮監督を受けつつ、管内の労基署を指揮・監督する機関です。

労働基準法(労基法)に定められた監督行政機関として、労基法などの違反事実を調査・指導する目的で調査を行っています。監督官は、労基法を根拠に帳簿や書類の提出を求めることができ、事業主や社員に対して尋問を行うことができます。

さらに、監督官は刑事訴訟法の特別司法職員としての職務権限も有していますので、労基法違反を繰り返して行政指導に従わない会社や、重大な法令違反を犯している会社を発見した場合には、事業主を逮捕したり送検したりすることも可能です。

ここでは、以下のように是正勧告の対象となりやすい問題をまとめました。ご参考ください。

●労基署から連絡があったら
●残業代を抑える方法


 

 

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◆残業代を請求されたら     ◆解雇するために必要な条件            ◆解雇する場合の注意点


労基署から連絡があったら

「合同労組から団体交渉の申し入れがあったけど、どうしたらいいのかわからない」
「会社の苦しい経営状況を全く理解せず、無理難題をいうのみで、困っている」
「団体交渉のルールに問題があり、大人数、長時間の団体交渉を強いられている」
「所定労働時間内に組合活動を行ったり、会社施設にビラを貼ったりして、困っている」

このような場合は、弁護士にご相談ください。以下の流れで上記の悩みに対処いたします。

 

(1)法律相談

労務問題の拠りどころである労働諸法は、労働者保護の観点を重視しています。つまり、労働組合は労働諸法によって手厚く保護されています。
したがって、会社の都合を押し通すだけでは解決に向けて前進することができません。しかしながら、労働組合の要求を鵜呑みにしてしまっては、会社が不利益をこうむることになります。当職にご相談いただければ、労働法制を踏まえた上で、会社にとって最善の対応方針を見出していきます。

(2)打ち合わせ(調査)

会社の業務内容、従業員数、経営状況、労働組合との関係、労働組合の設立経緯などについて調査した上で、団体交渉の進め方や、団体交渉での資料開示、事実関係の説明などについて事前に打ち合わせ・アドバイスを行います。

(3)文書の作成

労働組合から要求がある場合、文書で通知される場合が多いようです。これは、労務トラブルが訴訟に発展した場合に、裁判所や労働委員会が文書を証拠として重要視することをよく知っているからです。会社も様々な事態を想定して、証拠として信頼性の高い文書を慎重に作成する必要があります。
したがって、文書を作成する際は、弁護士に文書を事前チェックしてもらうことで、紛争を防止したり、その後の交渉を有利に進めたりすることができます。

(4)団体交渉の出席

弁護士が人事・総務担当者などと一緒に、団体交渉に出席することができます。弁護士が出席することで、労働組合法や労働基準法の知識が無いために生じる無用のトラブルを防ぐことができます。また、会社の説明が労働組合に誤解を与えかねないような場合には、会社の説明を適宜フォローし、紛争を防止することができます。
ただし、あくまでも団体交渉は会社と労働組合が行うもので、弁護士が団体交渉に出席するのは例外的な場合に限られます。団体交渉に不安があれば、事前に弁護士に相談して対策を練ることも効果的でしょう。

(5)訴訟、不当労働行為救済申立された場合の対応

団体交渉で問題を解決できない場合は、組合員または労働組合が裁判所や労働委員会に訴訟や不当労働行為救済申立を行うことがあります。その場合、弁護士が会社の代理人として裁判にあたります。労務に関しては、社会保険労務士に相談される方が多いようですが、弁護士以外は裁判で代理人を務めることはできません。
労務問題が訴訟にまで発展することが珍しくなくなった今日では、はじめから訴訟までをも見通した対応が必要です。したがって、労務に関するお悩みがあれば、弁護士に相談されることをお薦めします。

(6)労働委員会へのあっせん申請について

団体交渉で、組合活動や便宜供与、交渉のルールについて合意が得られない場合は、会社が労働委員会に対して斡旋(あっせん)申請をすることで、斡旋委員の監察下のもとで、便宜供与や団体交渉ルールについて話し合いをすることができます。この場合も、一般の事例やこれまでの経緯などを代理人である弁護士が整理して説明することで、斡旋委員に会社の実情や労使関係を理解してもらうことができます。

そうすることで、事案に応じた解決を図り、紛争を未然に防止することができます。ただし、労働委員会に会社が斡旋申請をする以上、ある程度の譲歩はせざるを得ませんので、その点は注意が必要です。

相談できる弁護士がいる場合は、従業員が労働組合に加入したことを速やかに伝え、今後の対応を相談してください。日本の労働組合法は労使自治を原則としており、会社と労働組合との合意や慣行(ルール)を尊重します。労働組合と合意しなくともよい労働協約を結んだり、会社に不利益な慣行を認めたりすると、後の労使紛争に発展しかねませんので、最初の対応が肝心です。

相談できる弁護士がまだ見つかっていない場合は、早急にお探しください。会社の中に人事・労務に詳しい方がいる場合でも、合同労組との交渉が決裂すれば訴訟になることも考えられます。訴訟にまで発展することを考えれば、早めに弁護士に相談して、訴訟を有利に運べるように対策をとるのが賢明でしょう。

 

 

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労働組合対策

労務トラブルはどれも経営者の悩みの種ですが、その中でも最も経営者の頭を悩ませる問題が、団体交渉をはじめとする労働組合対策です。労働組合結成通知書や団体交渉申入書が何の前触れも無く送られてくると、多くの経営者は少なからず驚き、戸惑ってしまいます。慣れない書類が送られてくるわけですから、戸惑ってしまうのも無理はありません。

労働組合が無い会社でも、安心はできません。解雇や退職で会社を去った元従業員が合同労組(ユニオン)に駆け込み、団体交渉を要求してくるケースがあるからです。合同労組(ユニオン)とは、所属している企業を問わず、個人単位で加盟できる労働組合のことです。

ここでは、最もご相談の多い団体交渉への対応を中心にご説明いたします。ご参考ください。

  

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団体交渉をされた時の対応

団体交渉を申し入れられたら

従業員が労働組合を結成すると、労働組合は会社に対して労働組合加入通知書、団体交渉申入書を送ってきます。慣れない書類が送られてきたことで、少なからず戸惑ってしまう経営者の方も少なくないようです。

こうした場面で経営者がはじめにやるべきことは、気持ちを落ち着かせ、冷静な判断ができるようになるまでは行動しないことです。冷静な判断ができるようになってから、改めて労働組合結成通知書や団体交渉申入書を読み直し、会社としての対応を考えましょう。このような場面で慌てて労働組合に連絡してしまったために、相手の一方的なペースにはまってしまって、後で融通が利かなくなるということもよくあります。

社内に在籍する従業員が代表者を務める労働組合の場合は、団体交渉に応じてください。正当な理由無く応じない場合、それだけで労働組合法違反となり、不当労働行為となります(労働組合法第7条の二)。ただし、赤の他人である外部の合同労働組合からの団体交渉申入を無条件で受け入れなければいけない法的義務はありません。無視した方が良かったケースさえあります。団体交渉に応じるべきか否かの判断が難しい場合は、早急に弁護士に相談しましょう。

 

労働組合の今後を分析しましょう

(1)社内に在籍する従業員が労働組合を結成した場合

①支部や分会があるか
労働組合本部が組織拡大を図りたいと考えている場合、○支部や○分会と称して、支部や分会を結成することが多いようです。この場合、労働組合がすぐに消滅してしまうということは考えにくく、少なくとも数ヶ月、あるいは何年にもわたって活動を続けることがあります。

また、労働組合結成後も、社内の従業員に対して組合員になるように勧誘活動を行います。したがって、労働組合結成通知書を送付してきた団体が支部や分会を結成したかどうかを確認することで、その労働組合の今後の活動をある程度予測することができます。

②代表者は誰か
支部の執行委員長や分会長を誰が務めているかを知ることは重要なポイントです。社内の従業員が執行委員長や分会長である場合は、「執行委員長」や「分会長」といった名称が付与されている場合が多く、その旨を結成通知書に記載しているはずです。
支部の執行委員長や分会長を人望のある従業員が務めている場合は組合員の勧誘活動もうまくいくことが多く、団体結成後に組合員数が増えやすいようです。また、労働組合が活動を維持するためには、様々な雑務をこなす必要があります。執行委員長や分会長は、組合本部との連絡や雑務などを担当することになるので、率先して手間のかかることや面倒くさいことを引き受けることができる人でなければ、組合活動は長続きしないでしょう。

また、執行委員長や分会長が会社に対して強い不満を持っているかどうかも大きなポイントです。なぜなら、執行委員長や分会長の意向によって労働組合の活動は左右されることが多いためです。執行委員長や分会長の考え方によっては、活動が過激になったり、協調路線に転換したりすることがあります。
以上のように、労働組合の執行委員長や分会長を確認することで、その労働組合の今後の活動をある程度予測することができます。

③上部団体はどこか
社内に支部や分会が結成された場合は、上部団体が存在します。上部団体は労働組合結成通知書に記載されています。上部団体がどのような団体かわからない場合は、インターネットで検索してみましょう。ホームページの記事や写真などから、その団体の考え方や思想を知ることができます。

ホームページを見る際は、リンクの部分も確認しましょう。リンクの部分には、その上部団体が加盟している他の団体名などが掲載されているはずです。労働組合は、連合、全労連、全労協などに分かれます。合同労組(ユニオン)も独立系の労働組合はありますが、大抵は連合、全労連、全労協に加盟しているはずです。リンク先のホームページを見ることで、団体が有している思想や、行っている活動を伺い知ることができるでしょう。

したがって、労働組合結成通知書に記載されている支部や分会の上部団体のホームページを確認して思想や活動を知ることで、その労働組合の今後の活動をある程度予測することができます。

(2)退職した従業員が労働組合を結成した場合

退職者や被解雇者など、会社を一度去った人間が労働組合に加入した場合は、金銭で和解を図れる場合が多いため、金銭面の折り合いがつけば、比較的短期間で活動が終了する場合が多いようです。ただし、労働組合から法外な金額を要求された場合は団体交渉を何度も開催しなければならなくなったり、訴訟に発展したりすることもあります。

また、被解雇者の職場復帰を要求されたために、会社が要求を呑んで被解雇者を職場に復帰させた場合は、復帰した従業員が他の社員に対して団体への勧誘活動を始めます。
したがって、労働組合を結成した従業員が会社に在籍するかどうかを確認することで、その労働組合の今後の活動をある程度予測することができます。

 

 

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団体交渉の流れ・進め方

①団体交渉の出席者

労働組合は社長や代表者が団体交渉に出席するように求てきます。しかし、社長や代表者が団体交渉に出席する法的義務はありません。社長や代表者と同じくらい労働条件などについて決定できる権限を有する人事課長や総務課長でも一向にかまいません。

ただし、「社長に聞かないとわからない」、「団体交渉で答えることは出来ない」と回答することは許されません。そのような交渉は、不誠実団体交渉に該当するため、不当労働行為となるおそれがあります。
事前に聞いていない要求の場合は、初めて聞いた内容につき、社内に持ち帰って検討する旨を主張しましょう。また、社内に複数の労働組合が存在する場合は、他の労働組合の団体交渉の出席者との均衡も図らなければなりませんので、注意が必要です。こういった場合は弁護士などの専門家に相談し、他団体の交渉内容と矛盾が生じないか確認してもらうのがよいでしょう。
 
 

② 団体交渉の場所

労働組合は会社内の施設や会議室で団体交渉をするように求めてきますが、こうした要求に応える必要はありません。団体交渉の場所は、会社と労働組合が協議して決めればよいのであって、必ずしも会社施設で行う必要はありません。
また、合同労組との交渉の場合は先方の事務所を交渉場所として指定されることがありますが、予定時間を過ぎても延々と解放されない可能性もありますので、労働組合の事務所も避けた方が賢明でしょう。

会社内の施設や合同労組の施設では終了時間がルーズになりがちです。したがって、商工会議所の会議室や、公共の施設などを指定することをお薦めします。ただし、「会社内の施設に余裕がない」といった理由を説明しないと、労働組合は納得しないでしょう。
 
 

③ 団体交渉の日時

労働組合の指定した日時で団体交渉を行う必要は全くありません。労働組合は、所定労働時間内に団体交渉を開催するように要求してくる場合が多いようです。しかしながら、労働組合の活動は所定労働時間外に会社外の施設で行うのが原則です。便宜給与の取り決めも無しに所定労働時間内の団体交渉を容認してしまうと、その時間に相当する従業員(組合員)の賃金を保証することにもなりかねません。

また、所定労働時間内の労働組合活動を容認したと主張される可能性もあります。したがって、原則として、団体交渉は所定労働時間外に開催するようにしましょう。
労働組合が指定した日時で会社側の都合が悪いのであれば、早めに労働組合に伝え、日程調整をしましょう。ただし、何週間も先の日時に団体交渉をするのはやめてください。団体交渉拒否にあたるおそれがあります。
 
 

④ 団体交渉のルール

団体交渉の進め方について、労使双方が話し合って、ルールを作ることをおすすめします。団体交渉では、ルールが非常に重要視されます。したがって、最初の団体交渉の方法(団体交渉を行う場所、日時、人員、交渉事項)は必ず事前に文書でもらい、十分に検討して有利な条件を提示してから交渉に臨みましょう。何ら対策を練らずに交渉の席に着いてしまうと、労働組合に有利なように設定された方法がルールであると主張され、最後まで思うように交渉を進めることができなくなる可能性もあるので注意が必要です。

団体交渉を行う場所、日時、人員、交渉事項などを決めたら、書面にして労働組合と労働協約を締結しましょう。後々のトラブルを防ぐためにも、弁護士などの専門家と話し合った上で書面化し、労働協約を締結するようにした方がよいでしょう。

具体的には、以下の点について話し合った上で、ルールを作成するとよいでしょう。
● 労働組合員の労働条件や待遇に関する基準について、事前に労働組合と協議を行うこと
● 団体交渉は原則として所定労働時間外に行うこと
● 双方○名程度(以内)の出席者とすること
● 団体交渉の場所は、○○○で行うこと(※原則として社外の施設を利用しましょう)
● 団体交渉の交渉時間は、1回あたり原則として○時間とすること
ただし、開催中の団体交渉を延長する場合は、双方合意の上で1時間以内の延長とすること
● 団体交渉の日時、議題を事前に書面で通知すること
● 上記事項を変更したい場合は、双方が誠意をもって協議を行うこと
 
 

⑤ 議事録や録音について

団体交渉では、協議内容を記録に残すようにしましょう。団体交渉の目的は、話し合いを行うことで労使間の合意形成を図り、最終的に労働協約を締結することです。したがって、協議の結果、双方で合意した内容は最低限記録するようにしましょう。団体交渉の内容を録音すべきかは悩むところですが、労働組合が録音するようであれば、会社も録音するようにしましょう。また、録音した内容は活字にして残すようにしましょう。録音しない場合は、2名以上で団体交渉に出席し、そのうちの1名がメモを取るようにしましょう。
 
 

⑥ 団体交渉での発言者について

団体交渉での発言者は、なるべく1名にとどめましょう。各人が思い思いのことを言ってしまうと、発言に食い違いが出てきたり、感情的な発言をする人が出てきたりして、交渉を有利に進めることができなくなるためです。発言者であっても、基本的には聞かれたことに対して回答するだけで問題ありません。
 
 

⑦ 資料の提出について

労働組合から会社に資料の提出を求められることがありますが、要求のあった全ての資料を提出する必要はありません。特に、営業上の機密に該当する事項などを含む資料は安易に提出しない方が賢明でしょう。ただし、労働組合に説明する上で必要な資料は用意する必要があります。一般的に妥当な範囲での経理資料の提出義務は、誠意をもって交渉に臨むという点で、信義則上、資料を提供する必要があると言われています。回答の算定根拠とした資料の他に、過去の実績(総収益、総支出、人件費の推移など)と、将来の収支見通しや予算などについても、解答できる範囲で答えましょう。
 
 

⑧ 議事録へのサインについて

労働組合から団体交渉で作成した議事録にサインを求められることがあります。しかし、これにはサインをしないようにしましょう。サインをしてしまうと、労働組合に都合のよい部分を労働協約であると主張される可能性があるからです。原則として、合意事項以外にサインすることは厳禁です。
専門家に相談しましょう
団体交渉で会社にとって不利益をもたらさないようにするためには、事前の対策が重要です。弁護士などの専門家に相談して、十分な準備をしてから団体交渉に臨みましょう。

 

 

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団体交渉をされないために

労働組合との労使関係の見直し

会社と労働組合の間には、様々なルールが存在します。しかしながら、そのルールが本当に会社の実情に沿ったもので、トラブルの元になる可能性を有していないかということについて、トラブル予防の観点から見直すことも重要です。

以下では、労働組合との労使関係を見直し、団体交渉を防ぐための確認事項について説明します。

 

(1)従業員の組合活動について

①所定労働時間内の組合活動
労働組合員といえども、会社に労務を提供すべき義務があります。したがって、会社と労働組合で便宜供与の取り決めをしない限り、所定労働時間内に労働組合活動をしていけません。会社がそのような行為を黙認してきたのであれば、専門家と相談の上、労働組合と協議されることをお薦めします。

②労働組合の広報活動
会社の施設内に、許可無くビラが掲載されていたり、組合旗が掲揚されていたりはしないでしょうか。特別な事情がない限り、労働組合は会社の許可なく会社の施設を利用してはいけません。会社がそのような行為を黙認してきたのであれば、専門家と相談した上で、あらためて労働組合と話し合うことをお薦めします。

(2)労働協約について

①労働組合員の人事異動
労働組合の同意がなければ労働組合員の解雇ができないという旨の労働協約を締結している場合があります。そもそも労働者を解雇するのに労働組合の同意はいりません。このような労働協約については、労働組合に合意解約を申し入れてください。

団体交渉を十分に重ねても、労働組合が労働協約の合意解約に納得しない場合は、労働組合法の手続きにもとづき、労働協約を解約してください。労働協約の合意解約については、トラブルを防ぐために、事前に弁護士などの専門家に相談することをお薦めします。

②労働協約内容の独立
労働協約を解約する場合は、一部解約ではなく、全部解約をした方がその効力を認められやすいため、内容ごとに別々の労働協約を締結した方が解約する上では無用な混乱や紛争を防ぐことができます。例えば、掲示板の設置、組合事務所の貸与などについても、まとめてひとつの書面で労働協約を締結するのではなく、別々の労働協約を締結した方がよいでしょう。

(3)便宜供与の文面について

①事務所や掲示板の無償貸与
有償で組合事務所や掲示板を貸与すると、法律上は賃貸借となり、賃借人である労働組合が保護されてしまいます。したがって、組合事務所や掲示板は無償で貸与してください。

②組合事務所や掲示板の変更・撤去
便宜供与を定めた当初は問題がなくとも、その後の会社の経営状況によっては、組合事務所や掲示板の場所を変更する必要が生じてくる場合があります。そうした際、円滑に組合事務所や掲示板の場所を変更できるように事前に定めておきましょう。また、組合員が社内にいなくなったときには、速やかに掲示板や労働組合事務所を撤去できるように事前に規定を定めておくことも重要です。

③掲示物
あくまでも掲示板は会社施設を利用してのものですので、会社の業務上の都合や会社の職場秩序維持の観点から掲示板の利用についても制限を設けるべきです。例えば、掲示板の場所や大きさ、掲示物の内容(中傷、誹謗、侮辱、事実に反する記載をしない)に関する規定が考えられるでしょう。また、協定を守らなかった場合は、組合事務所や掲示板を撤去するという旨の規定を設け、協定で定めた内容に関する効力を保持しましょう。

④協定の変更や廃棄
協定の有効期間を定め、有効期間の1ヶ月前までに協定の変更や廃棄(協定不更新)の申し出ができることを定めましょう。業務上の都合により、これ以上、これまでの便宜供与をすることが出来ないのであれば、事前の申し出により協定が終了するように規定を定めておきましょう。

(4)労働組合員とその他の従業員との取り扱いについて

労働組合員が職場の秩序を乱すような行為をしたのであれば、きちんと就業規則などの手続きにもとづいて懲戒処分をするべきです。それは不当労働行為ではありません。ただし、労働組合員以外の会社従業員が労働組合員と同じように職場秩序を乱す行為をしたのであれば、その場合もきちんと懲戒処分をしてください。労働組合員と他の労働組合員以外の従業員との処遇に差を設けてはいけません。

(5)団体交渉の進め方について

会社側の出席者が2~3名なのに対し、労働組合側の出席者が十数名で、かつ会社側の出席者を取り囲む形で団体交渉が行われているなどということはないでしょうか。このような形態で団体交渉を行うと、誰が何を言ったのかが把握できなくなりますし、会社側の出席者が心理的なプレッシャーを受ける可能性があります。

また、団体交渉が深夜まで及ぶ状態になっていたり、合意に至らなければ団体交渉が終了しなかったりすることも、正常な団体交渉とはいえません。早急に労働組合にルールの変更を申し入れるべきです。

(6)団体交渉の協議内容について

労働組合の賃金ベースアップや賞与の要求金額をそのまま受け入れる必要はありません。もちろん、十分な労使協議がなされた後に労働組合の要求を受け入れることは一向にかまいませんが、会社の経営状況が苦しいにもかかわらず、労働組合の要求を十分な協議もせず受け入れている会社もあります。

労働組合法は労使双方の十分な協議を要求していますが、使用者が労働組合の要求を全て受け入れなければならないとは定めていません。主張すべきことは主張しましょう。労働組合からは様々な抗議があるかもしれませんが、客観的な資料にもとづいて十分な説明をしましょう。

労働組合との労使関係は、団体交渉において重要なポイントです。良好な労使関係を構築して団体交渉を防ぐには、弁護士などの専門家に相談するのがよいでしょう。

 

 

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団体交渉の注意点

やってはいけない10の対応

 

(1)上部団体の役員の出席を拒否する

会社と従業員の間の労働条件などに関して交渉する場合、会社とは何ら関係のない労働組合の上部団体の人間がなぜ出てくるのかと疑問に思う会社の担当者が多いようです。しかしながら、労働組合法上、使用者は上部団体の団体交渉の申し入れには応じなければなりませんし、上部団体の役員の参加を拒めないとされています。

何も知らずに上部団体の役員の参加を拒んだりすると、労働組合は猛烈に抗議をしてきます。その時点で初めて違法行為を行ったことを知る会社の担当者は少なくありません。こうなると、労働組合から謝罪を求められ、会社にとって不利なペースで団体交渉が進められることになります。一見関係の薄い上部団体の役員であっても、団体交渉への参加を拒否することなく、団体交渉を行いましょう。

(2)社内の施設や労働組合事務所で団体交渉を行う

労働組合は、社内の施設や労働組合本部の事務所で団体交渉を行おうとします。しかしながら、団体交渉を会社の施設や労働組合の事務所で開催する必要はありません。団体交渉を会社の施設や労働組合の事務所で行ってしまうと、次回以降も労働組合の活動で会社の施設を使用することを拒否できなくなったり、団体交渉に無用の混乱をもたらす原因になったりします。

(3)所定労働時間内に団体交渉を開催する

労働組合が、所定労働時間内に団体交渉を開催するよう要求してくることがあります。これを認めてしまうと、仕事を中断して団体交渉を開催することになり、後々、団体交渉開催中の賃金を支払うように要求されかねません。使用者は、従業員が団体交渉や労働組合活動に費やした時間に対して賃金を支払う必要はありませんが、そもそも所定労働時間内に団体交渉を開催しなければ、賃金に関する不要なトラブルを避けることができるはずです。

(4)労働組合員全員が誰であるかわかるまで団体交渉を行わない

労働組合結成直後は、労働組合員が誰なのか不明な場合があります。会社によっては、どの従業員が労働組合に加入しているのかわかるまでは団体交渉に応じないという場合がありますが、労働組合には労働組合員を明示する義務がありません。労働組合員が全員わかるまで団体交渉に応じないと、団体交渉拒否として不当労働行為となるおそれがあるため、まずは団体交渉に応じましょう。

なお、はじめは労働組合員が誰であるかわからない場合でも、時間が経つと判明する場合が多いため、結成当初はあまり神経質になるべきではないでしょう。

(5)労働組合が用意した書類にサインをしてしまう

労働組合によっては、団体交渉終了後に議事録と称した書類にサインを求めてくる場合があります。会社の担当者の中には、議事録だからといって安易にサインをしてしまうことがあります。しかし、議事録でも覚書でも、文書の名称は何であれ、労働協約の様式を備えていれば、その文書が労働協約として効力を有することがあります。安易にサインに応じると、会社に不利益を与えてしまいます。

したがって、どのような文書であってもすぐにはサインに応じずに、一旦会社に持ち帰る旨を伝えて、団体交渉の場では安易にサインをしないようにしましょう。

(6)組合の要求をのまないと不当労働行為になると思ってしまう

労働組合法は、使用者に対し、団体交渉に応じ、誠実に交渉する義務を課しています。このことを勘違いし、労働組合の要求に応じないと不当労働行為になってしまうと思う方も少なくありません。もちろん、組合の要求に対して、会社の主張を裏付ける資料を提出したり、具体的な事実を説明したりする必要はありますが、会社が労働組合の要求をそのまま受け入れなければ不当労働行為になるというわけではありません。

会社が受け入れることのできない労働組合の要求であれば、具体的な資料や論拠にもとづいて説明した上で、要求を拒否してもかまいません。

(7)労働組合結成後、組合をやめるように説得する

労働組合結成直後、会社が労働組合員に対して労働組合をやめるように説得することがあります。このような行為は労働組合の運営に介入するものであり、支配介入行為として禁止されています。労働組合員は、色々なことを考えた上で労働組合に加入しているわけですから、会社が労働組合をやめるように要請したからといって、素直に労働組合をやめるようなことはありません。むしろ、このような発言は、労働組合に会社を攻撃する材料を与えることになります。

(8)関係会社の問題なのに親会社が団体交渉に参加してしまう

多数の関係会社を有している比較的規模の大きな会社の場合、関係会社の従業員が合同労組に駆け込むこともあります。このような場合、合同労組は従業員が勤務している関係会社だけではなく、親会社に対しても団体交渉を要求することが多々あります。

合同労組と関係会社の従業員との問題であり、親会社は全く関係が無いにもかかわらず、合同労組によっては、執拗に親会社の団体交渉拒否を主張してくる場合があります。会社によっては、これに応じてしまうところもありますが、一度団体交渉に応じてしまうと、その後も団体交渉に応じざるを得なくなります。法的には、関係会社と親会社が一定以上の密接な関係にあれば団体交渉に応じる義務があるといわれていますが、はじめから親会社が団体交渉に応じるべきではありません

(9)掲示板の貸与や就業時間中の組合活動を認めてしまう

複数の従業員が組合を結成した場合、労働組合は会社に対して便宜供与を求めることがあります。しかし、労働組合法第7条3号は、「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」を不当労働行為として禁止しています(例外として必要最小限の広さの事務所の供与をすることは容認)。

また、会社は施設管理権を有しており、建物や設備を会社の裁量のもとに管理できるため、組合に掲示板を貸与するかどうかを決定することができます。
就業時間中の組合活動については、就業時間中は職務に専念する労働者の義務を履行するように会社が求めることで、就業時間中の組合活動を禁止することは原則として自由です。会社の施設や人員に余裕が無い場合は、そのことを具体的に説明して便宜供与を断っても、何ら不当労働行為にはあたりません。

(10)訴訟中であることを理由に団体交渉を拒否してしまう

従業員が合同労組に加入して団体交渉を続けても、会社と合同労組が合意に至らない場合が多々あります。団体交渉で解決が図れないと合同労組が判断した場合、労働審判を申し立てるなどの法的手続きを取る場合があります。それと平行して団体交渉を申し入れる合同労組もあります。

この場合、「訴訟で争っているので団体交渉を開催する必要はない」と会社の担当者が主張することがありますが、訴訟が進行中であっても団体交渉を拒否することはできません。したがって、原則として団体交渉には応じてください。もっとも、議題は進行中の訴訟内容と重複するでしょうから、団体交渉では、「訴訟で主張しているとおり、会社は○○○と考えている」と述べざるを得ないでしょう。

専門家に相談しましょう

団体交渉で会社にとって不利益をもたらさないようにするためには、事前の対策が重要です。弁護士などの専門家に相談して、十分な準備をしてから団体交渉に臨みましょう。

 

 

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ユニオンへの対応

合同労組(ユニオン)とは何か

従業員が所属している企業を問わず、個人単位で加盟できる労働組合のことを合同労組(ユニオン)といいます。したがって、合同労組は企業別の労働組合とは異なり、複数の企業や異業種企業の労働者が構成メンバーとなっています。

労働者が解雇や賃金の不利益変更、配転などに不満を持ち、その問題を解決するために合同労組に加入するケースが多いようです。合同労組の特徴は以下のとおりです。

一人でも加入できる労働組合であるという点を強くアピールしていること
正社員のみならず、契約社員・パートタイマー・派遣労働者、管理職まで幅広く加入対象としていること
労働者個人と会社の間で生じた労務トラブル(解雇・サービス残業・長時間労働など)に関するサポートを活動の中心としていること

 

合同労組へ対応する際の基本スタンス

合同労組に対応するための基本スタンスは、やってはいけないことをやらないことです。日本の労働組合法は、労使自治を原則としており、会社と労働組合の間で交わされた合意事項や慣行を尊重します。労働組合と不要な労働協約を締結したり、会社に不利益な慣行を認めたりすると、後の労使紛争を招くことになりかねません。
 

解雇した従業員が合同労組に加入した場合

解雇とは雇用契約の終了を意味します。したがって、解雇した従業員が合同労組に加入したからといって、団体交渉に応じる必要はないのではないかと疑問に思う方も少なくありません。しかしながら、解雇が有効であるかどうかが争点になっている場合は、解雇した従業員が加入した合同労組からの団体交渉に応じなければなりません。
 

合同労組と交渉する際の4つのポイント

合同労組と交渉する際は、上記で述べたとおり、労働組合法にのっとって団体交渉をしてください。この点は、交渉相手が合同労組であっても、企業内組合であっても変わりません。ただし、合同労組は以下の点で企業内労組と異なりますので、注意が必要です。

① 第一回目の団体交渉が重要です

団体交渉では、労使間の慣行(ルール)が非常に重要視されます。最初の団体交渉のやり方が、団体交渉する際のルールとして最後まで適用されてしまいます。しかも、そのルールを変えるには合理的な理由が必要になります。

具体的には、第一回目の団体交渉を社内の会議室で行った場合は、原則として第二回目以降も社内の会議室を用意しなければなりません。第一回目の団体交渉を社内の施設で行った以上、会社には団体交渉ができるような場所がないと言えなくなってしまうのです。

合同労組は、団体交渉の日時、場所を指定して早めに団体交渉を開催するように要求してきます。これを鵜呑みにして、労基法や労働組合法などについて十分な知識を持たないまま団体交渉に臨むと、合同労組に有利なまま団体交渉が進んでしまいます。合同労組の執行委員(団体交渉の出席者)はこのことをよく知っているからこそ、早い時期での団体交渉を要求してきます。企業側は団体交渉の申し入れがあってもすぐに返答するようなことはせず、きちんと準備してから第一回目の団体交渉に臨むことが重要です。

② 合同労組の発言にひるまない

一部の合同労組は、不当労働行為にあたらない使用者の行為について、「それは不当労働行為だ」「労働委員会に申立をするぞ」などと発言することがあります(もちろん、一部の合同労組についての事例であり、本当に不当労働行為にあたる場合もあります)。このように主張されると、恐ろしくなって労働組合のいうとおりに労働協約を結んでしまう場合がありますが、それでは相手の思うツボです。事前に弁護士などの専門家を交え、団体交渉に向けて十分な打ち合わせをすれば、このような発言にも適切に対応できます。

③ 合同労組のスタッフの負担も重い

企業の担当者の中には、どうして自分がこんなに団体交渉で苦労しなければならないのかと悩み苦しむ方もいらっしゃいます。しかしながら、合同労組のスタッフ(執行委員)の中にも、団体交渉について相当な負担感を感じている方がいるはずです。

なぜなら、多様な労働者を受け入れている合同労組は、問題解決のために多くの企業に団体交渉を申し入れるため、一人のスタッフがかなりの数の団体交渉を担当していることが推測されるからです。苦しいのはお互い様と考え、解決に至るまで粘り強く交渉しましょう。

④解決の糸口が見つかるまで粘り強く交渉する

企業の考えを述べ続けて団体交渉を進めていくと、合同労組から解決案を提示される場合があります。例えば、解雇問題について団体交渉を重ねている場合に、一定額の金銭を支払うことを条件に合意退職をする案を提示されることがあります。
会社の主張を裏付けるデータを提示しながら説明を続けていくと、合同労組も実情を理解し、解決案を示してくれることがありますので、団体交渉を打ち切ったりせず、粘り強く交渉してみてください。
 
 

合同労組から無理難題を突きつけられたら

労働組合が大人数でまともに団体交渉を開催できない、労働組合が多額の金銭を要求してきて交渉が全く進まない、といった場合は、労働委員会に会社側から斡旋(あっせん)を申し立てることができます。

斡旋は、労働委員会の斡旋員が仲介役として双方の主張を確かめ、事件が解決されるように努める制度です。通常は労働組合が申請するものですが、会社が申請することができます。また、審問(訴訟に言う証人尋問)を行うことがなく、詳細な書面を書く必要もないため、手続きが簡単です。

斡旋員は、両者から事情を聴取して斡旋の努力を行いますが、斡旋案を出す場合と出さない場合があります。提示された解決案を受け入れるかどうかは当事者の自由です。会社が斡旋を申請する場合は、会社がある程度譲歩することを前提にしていると斡旋員は判断するため、ある程度の譲歩は必要になります。また、労働組合は斡旋に応じないこともできますので、必ず労働組合が斡旋の席に着くかどうかは分かりません。

 

 

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